作品全体を通しての”正直”な感想
まずは、面白かったです。
それぞれの人にそれぞれの安楽死をした理由があり、どれも自分がその人の立場だったらそう考えてしまうなというものばかりでした。
私が特に気に入っている章は『天秤』と『その時、彼は勇者になった』です。
どの章もハッピーエンドといいますか、誰も不幸にならない点は美しい物語であると感じましたが、もう少し捻りが欲しかった感もあります。
考えさせられた点
この物語の中で私が考えさせられたことを3つに分けて紹介します。
- 私にとっての”生きる意味”とは
- 生きることが全ての人にとって救いではないこと
- 自分が〈アシスター〉だったらどんな言葉をかけるか
私にとっての”生きる意味”とは
こちらは1p目の『生きる意味とは何か』で紹介しているので、読み飛ばしたよ〜という方はぜひ戻って読んでみてください。
生きること≠救い
生きることが全ての人にとって救いではない。
まさにその通りだと思います。
仮に、私たちが見出した生きる理由がなくなってしまったと考えたらどうでしょうか。
生きる理由も持たずにそのまま生きることがその人にとって本当の”救い”なのでしょうか。
そういったことを何回も考えさせられました。
何回考えても答えは出ませんね。
自分が〈アシスター〉だったらどんな言葉をかけるか
これが私が今回考えた中で一番の難題です。読み終わってから時間が経ちますが、いまだにかける言葉が見つかりません。
そこで逆に私が安楽死希望者の立場だったら、ということを考えてみました。
私がアシスターにして欲しいことがあるとしたらそれは「正直に接して欲しい」ということですかね。
その点、眞白の接し方は素晴らしかったと思います。どこまでも正直で誠実で。
アシスターは眞白のように『心の底からこの人を救いたい』と思えるようになることが、一番大切なのではないかなと思います。
それが一番難しいです。
もうちょっとここが欲しかった。
本作品を読んでいて私は「安楽死を希望者のRENを取り下げる決断が早すぎない?」と感じました。
理由はいくつかあると思います。
RENは取得してから、安楽死をするまでの検討期間1年+最終意向確認3日という長い期間がかかり、生涯で一度しか取得申請できないというものでした。
生涯で一度しか取得申請できないのですから生半可な気持ちでは申請できないですし、取り下げるという決断をするのも難しいことがわかります。
ここで考えてみて欲しいのがREN取得申請を破棄して一度『生きる』と決めてしまったら、あとはもうどんなに辛くても生きる道しか残されていないということです。
『ゆびきり』で東峰渚(なぎちゃん)も『眞白に会うと決意が揺らいでしまうから会いたくない』と言っていました。
まさにその通りだと思います。人生で最大の覚悟を持ってREN取得申請をしたはずなのに、一時的な感情で取り下げられるほど簡単な話じゃないはずです。
そこで思い出してほしいのがこのセリフ。
「一度でも死のうと思った人の生きる希望を探し出す。それは簡単ではありません。仮に希望者が一時的に心変わりして、申請を取り下げたとしましょう。その後ですぐにやっぱり死にたくなった、と思わせるようなことがあってはいけません。ですから申請を取り下げることが命を救うことだとは・・・絶対に勘違いしないでください」
『レゾンデートルの祈り』p20
この物語の登場人物は皆(海璃さん以外)生きる理由を見つけています。しかし、その生きる理由が見つかったとしてもそれが死にたい理由を上回っているとは決して言えないと思うんです。
もし、私が大切な人を失ってしまったとしたら多分相当なことがない限り立ち直れないと思います。
その相当なことが物語の中で起こっているか、と言われればそうではないのかなと感じています。
相当なことって言い方も変ですけどね。
私の場合に限らず、そういった感情の移り変わりや数年後に「こういう生き方をしているよ」ということをもう少し繊細に描いてくれていたら良かったなと感じています。
『レゾンデートルの祈り』の意味を考察
先ほども紹介しましたが、レゾンデートルには『自分が信じる生きる意味』や『存在価値』という意味があります。
それでは『レゾンデートルの祈り』とはなんでしょうか。
そのまま考えると「自分が信じる生きる意味を心から希望する」ですね。
これは安楽死希望者とアシスターの2視点で言い換えられると考えています。
安楽死希望者側から見ると「自分が生きていい理由を見つけたいと願っている」
アシスター側から見ると「あなたが生きる理由を見つけられることを願っている」と言ったところでしょうか。
他にもこんな意味があるんじゃないかと思った人は是非コメントやDMで教えてください。
まとめ②
面白い作品だからこそたくさん言いたいこともあるし、考えさせられることもあります。
私がこの作品を読んで感じたこと、伝えたかったことが皆さんに伝わっていると嬉しい限りです。
まだ『レゾンデートルの祈り』を読んでいないよ、という方がいらっしゃいましたら、一度読んでみてはいかがでしょうか。
一度読んだことある方ももう一度見返して、感じたことを教えてくれたらなと思います。