ここからはネタバレありの感想です。まだ読んでないよ!という方はブラウザバックでお願いします。
作品を通しての”正直”な感想
まず感じたのは『読みやすくて面白い。さらに感動する。』ということです。
ジャンルとしては機械が主体となる物語なので、SFに属するのかなと思います。
SFの作品はどうしても専門用語が多くなってしまうので、「難しい」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、この作品は『読みやすい』んですよ。
さらに面白くて感動もできる。

つよつよです。
でも、少しだけ「ん?」と疑問に思った場所もあります。
では、物語に入っていきましょう。
感想まとめ
※私は電子書籍を購入したので、書籍とはページが一致しない場合があります。
氷雨の考え方
p299『彼女は、僕のことを決して許さない。僕には、幸せになる資格がない。』
TOWAに幸せになってほしいと考えている優しい氷雨だからこそ、自分のせいで・・・と考えてしまうんですね。
また、辛いを思いをさせてしまったからこそ、これからTOWA達を幸せにしていく事も氷雨に課せられた使命でした。
藤崎円の言葉
p213に『TOWAは機械。人間じゃないの。それを忘れたらあなた、必ず苦しむことになる。』という発言があります。
こう割り切っている藤崎ですら、動かなくなったアンが帰ってきた時に声を震わせて電話してきているのですから、氷雨のショックの大きさは計り知れません。



ちなみにあのシーンは辛いからもう見たくない。
救いが救いにならなかった
結局、氷雨はアンの調整が終えた後に記憶を消さずに送り出しました。
氷雨も記憶を消したくなかったし、アンも記憶を消して欲しくなかった。
また、p157でも氷雨は「思い出を失いたくないと言って泣いたアンの願いを、撥ね付けることができなかった。」と言っています。
つまり、氷雨はアンの記憶を消した方が辛い思いをさせないで済んだと考えているということですね。
私も以前までは氷雨と同様で「記憶を消した方が良い」という考え方でしたが、正直今では「記憶を消す方」と「記憶を消さない方」のどちらが良いのか分からなくなってしまいました。
そう思う理由は以下の通り。
- 記憶を消したとしても同じ悲劇は起こる
- 人に慣れるように調整されているのだから、感情はしっかりあるはず
- 氷雨との記憶が辛いときの支えになっていたという事実
- 逆に幸せな記憶があるからこそ「辛いこと」が際立つ
- 記憶を残したことが氷雨の心を壊した最大の原因であった
辛い時に心の支えがある方がアンにとって幸せなのか、それとも何も知らなかった方が幸せなのか・・・。
結果的には、アンの記憶を消さなかったことがこの物語の大切な点になっているので、この物語は氷雨にしか作り出せないものだったのかなと思います。



考えれば考えるほど分からなくなってきます。
実はここが一番感動した
p303の佐藤菖蒲のセリフ
『ブラックアイリスの仲間達の中で、私は、お前のことが一番好きだったよ』
『一番馬鹿で、頭も悪くて……でも、一番優しくて……。TOWAのこと、本当に大事に思ってたなあ。毎日毎日、誰よりも努力して、一級にまで昇って……』
氷雨の努力を言葉にしてくれたのがとても嬉しかったです。
TOWAを作っていた時はまだ、これから起こる悲劇を何も知らなかったけど、TOWAを大切にしていたことは消えない。
それはTOWAに伝わっている。
そう伝えてくれるシーンに私の涙腺が・・・・。



(崩壊)
疑問に思った⇨TOWAと人間との違いって何?
機械と人間の恋を描いている作品ですが、結局のところTOWAって本当に機械なの?と思ってしまうことも多々ありました。
TOWAが機械であったのは調整前の段階だけであって、その後は人間と何ら変わりはないように感じました。
例えば、人間には「心」があって、機械には「心」は設計しない限り存在しません。



人間を作ろうとしているなら「心」の設計が一番重要な部分ですよね。
しかし、この作品では「心」が元々出来上がっているのでは?と感じるシーンもありました。
『機械』と人間の恋というよりは、人間同士の恋と言われた方がしっくりくるような気がします。
『ヒューマノイド』を題材にしているのであれば、ほぼ完璧な人間ではなく、もう少し機械味があっても良かったのかな。
ですが、本当に美しい物語で感動したのは確かです。
斉藤すず先生はこんなツイートをしていたので、もしかしたらTOWAについての情報を2巻以降で描く予定だったのかもしれません。
読んでみたかったですね。
一緒に歳を取ることはできない
機械と人間の恋にこれは切っても切り離せない問題です。
そこは気になるところでした。
これは、先ほどのツイートの通り物語の続きがあったとしたら、焦点を当ててくれていたと思うので続編が出ないのは本当に惜しいです。
まとめ②
以上が私がこの作品を読んでいて感じたこと、考えたことです。
今すぐ人に勧めたい、斉藤すず先生の他の作品も読んでみたい。
そう思わせてくれるような作品であったことは間違いないです。



一度読んだことある人も、もう一度読み直してみると新しい発見があるかもしれませんよ!